医者として見出した、本当に人を救える医療 2014.12.26 Iさん(40代・男性) Tweet この記事は毎月発刊の機関誌月刊「幸福の科学」第221号より転載し、編集を加えたものです。 患者にとっての幸福とは? 「死とは何か、生命とは何かという探究なしに、医療はできないのではないか」 私がそう思うようになったのは、医学部4年の時、開業医だった父が心筋梗塞で亡くなったのがきっかけでした。 しかし、現代の医学に答えはありません。大学を卒業し、臨床の現場に出ると、疑問はますます強くなっていきました。 がんの告知を控えていた末期の患者さんに「先生、だましとったんか!俺はもうすぐ死ぬんやろ?」と、すごい形相で迫られ、何も言えなかったこともありました。その男性が失意のうちに亡くなった時の無力感は、今でも忘れられません。 僻地の病院に赴任した時には、1カ月の間に15人もの死亡診断書を書かなくてはならず、「これが医者という仕事の現実なのか……」と苦しんだこともあります。 「患者の幸福とは何か」を問われるような出来事もありました。同僚の医師が、心臓障害を抱えた10代半ばの少女を救うために、患者の両親と相談しながら、アメリカでの心臓移植手術の準備を進めていた時のことです。渡米の準備が整い、同僚が初めて少女に移植の説明をすると、彼女はきっぱりこう言ったそうです。 「私は他の人の心臓をもらってまで、生き延びようとは思いません」 少女は、その後1年間の闘病生活の末、短い人生を終えました。彼女の毅然とした姿勢に、私は「医者は患者のために、何ができるのか」と考えさせられました。 患者が語った神秘体験 そして、医療の現場に立って5年目の夏、私が仏法真理に出会うきっかけとなった、不思議な出来事が起きました。 ある晩、入院中の50代の男性が、心筋梗塞を起こし、私が呼び出されました。駆けつけた時には、すでに心臓も呼吸も止まっていて危険な状態でした。懸命に心臓マッサージを施しましたが、鼓動は戻りません。私は電気ショックを与え、再び心臓マッサージを試みました。 どうか動いてくれ──。私は祈るような思いで蘇生措置を続けました。 「先生、戻りました!」 看護師が叫びました。心電図のモニターが正常な波形を描き始め、男性は息を吹き返したのです。 数日後、その男性の病室を訪ねた時、「先生、不思議なこともあるもんですね」と、その男性は話し始めました。 「実は、発作を起こして救急処置室に運ばれたとき、私はベッドの上にいる自分が見えたとです。先生が一生懸命、私の心臓をマッサージしとるのを、天井のあたりからずっと見とったですよ」 驚きました。そのような臨死体験があることは話に聞いたことはありましたが、実際に体験した人に出会ったのは初めてでした。 「死んでも終わりではないのか……」 その日以来、私は魂やあの世の存在に、強い関心を抱くようになったのです。 人生を変えた仏法真理との出会い 私は、書店に立ち寄っては、宗教や心霊治療の本を買い求め、手当たり次第に読むようになりました。 「あの世や、霊魂といったものは、どうやら本当にあるらしい」ということは、理解できました。しかし、私が知りたかった「生きる意味」について、納得できる答えを得ることはできませんでした。 そして数カ月後、ついに私は幸福の科学の仏法真理に出会ったのです。『太陽の法』『幸福の科学とは何か』など、大川隆法総裁先生の書籍を何冊か買い込み、自宅に戻って読み始めた時の衝撃は今でも忘れられません。 「人間は魂修行のために、この世とあの世を転生輪廻している」「人生は一冊の問題集であり、苦難は魂を磨く砥石である」「この世での心の境涯が、死後、行くべき世界を決める」――。知りたいと思っていた「人生の意味」が、圧倒的な説得力をもって示されていました。 「これは本物だ。ついに真理に出会えた」と、私は確信しました。 そして、『黄金の法』に書かれた一節を読んだ時、私の魂は激しく揺さぶられました。 「医者は、人間の生命の探究をその使命とします。そして、生死の境界線を彷徨う患者と対話する。それが、医者の仕事です。医者は、もっと、魂についての勉強をするべきです」 私は、人間の本質について何も知らずに、医者としての仕事をしていたことに気づきました。そして、これからは、患者の魂をもケアする医者になろうと決意したのです。 体も心も救える医者になりたい 現在、私は福岡県内の自動車関連メーカーに産業医として勤務しています。「病気の治療だけでなく、予防も含めて患者の人生そのものと向き合う、全人的医療を行いたい」という思いから、10年ほど前に大学病院を辞めて転身したのです。 産業医というのは、労働者の安全と健康を守る医者です。工場でのケガに対処したり、うつ病やテクノストレスに対応したりと、忙しい毎日を送っています。 病院勤めの時は、その人の病気しか診ていなかったのですが、今は患者さんの仕事内容から人間関係、時には人生観にまで注意を払い、職場の仲間として体と心の健康をサポートしています。 たとえ生命を救えないケースでも、魂の癒しを施すことにおいては全力で取り組んでいます。 ある時、こんなことがありました。50代の社員が「最近、左肩が痛い」と診察室にいらしたので、精密検査をすると、転移性の腎臓がんが発見されました。すでに回復は絶望的な状態でした。 私は、入院した彼に、大川隆法先生の『永遠の生命の世界』を渡し、「肉体は死んでも、魂は永遠である」という真実を伝えました。最初、「宗教はちょっと……」と言っていた彼も、私が何度も病室を見舞って話をするうちに、霊的人生観を受け入れてくれたようでした。 彼の死後、奥さんが私の診療室を訪ねてこられ、こう話してくれました。 「主人は、入院してからいつも、『I先生が心の支えだ』と申しておりました。先生からいただいたご本も繰り返し読んでいたようです。おかげさまで、主人は安らかに旅立ちました」 真理医療を目指して 仏法真理に出会う前、私自身が悩んでいたように、現代の医療には、人間の魂に対する理解が欠落しています。唯物的価値観の枠内に止まった医療では、「延命」こそが至上命題にならざるを得ませんが、どんなに医療が進歩しても、治らない病気は存在し、老化に伴う身体の衰えも避けられません。「人間の本質は霊である」という真実を知らずに、延命だけに力を尽くしても、患者を救済することはできないのです。 最近も、脳死者からの臓器移植についての議論が活発化していますが、これなども人間の本質が魂であることを知らない、誤った医療です。霊的視点に立てば、脳死は決して人の死ではありません。 人間は仏より永遠の生命を与えられ、魂を磨くためにこの世に生まれてきた存在です。人生の目的が魂修行である以上、医療もまた、魂の霊的進化を支えるものでなければなりません。 仏法真理を学ぶ医者として、患者の魂の救済につながる「真理医療」を目指し、実践していきたいと思います。 この記事は毎月発刊の機関誌月刊「幸福の科学」第221号より転載し、編集を加えたものです。 介護・福祉,信仰との出会い,月刊「幸福の科学」 関連リンク 幸福の科学機関誌 月刊「幸福の科学」 『太陽の法』 『黄金の法』 同じテーマの記事 人の苦しみには意味があると知って 2015.04.03 Hさん(30代・女性) この記事は毎月発刊の機関誌月刊「幸福の科学」第226号より転載し、編集を加えたものです。 世の中はなんと不公平だろうと思っていた 中学生の頃からマザー・テレサの生き方に憧れていた私は、「将来は苦しんでいる人たちのお役に立… 続きを読む 同じテーマの記事 脳溢血で寝たきりになった夫を介護――生活不安を乗り越えて 2015.03.14 Nさん(70代・女性) この記事は毎月発刊の機関誌月刊「幸福の科学」第243号より転載し、編集を加えたものです。 日系アメリカ人の夫との結婚を機にハワイへ 私は日系アメリカ人の夫と結婚し、それを機にハワイに移住。やがて2人の子宝に恵まれました。… 続きを読む 同じテーマの記事 「目が見えなくても、人生に光を見つけた」 2014.06.19 Aさん(20代・女性) この記事は隔月発刊の機関誌「ザ・伝道」第125号より転載し、編集を加えたものです。 見えることのない目 私は、生まれた時から目が見えません。 生まれつき目に障害があって、右目にわずかな光を感じるだけで、左目は何も見えませ… 続きを読む 同じテーマの記事 キリスト教、共産主義を経て幸福の科学に!聴覚障害、ろうあ者として生きて 2014.03.04 Kさん(50代・男性)、Nさん(20代・男性) この記事は、毎月発刊の機関誌月刊「幸福の科学」第254号より転載し、編集を加えたものです。 人生の問題集を乗り越えて 生まれつきの聴覚障害をもったKさん。ろうあ演劇で出会った青年・Nさんと、二人三脚で仏法真理を学んでいく… 続きを読む 同じテーマの記事 10年間、認知症の義母の介護を続けて 2013.11.07 Mさん(60代・女性) この記事は、隔月発刊の「ザ・伝道」第145号より転載し、編集を加えたものです。 なんで私がこんな目に――? この10年間、認知症の義母の介護をしながらも、私の頭からこの思いが完全に消え去ることはありませんでした。しかし… 続きを読む 同じテーマの記事 義父を介護する幸福な日々 2013.10.19 Yさん(50代・女性) この記事は、隔月発刊の「ザ・伝道」第198号より転載し、編集を加えたものです。 義父のお世話は私の仕事 私がY家に嫁いできた当時、義父は80歳を超えていました。 その数年前には心筋梗塞で倒れていたので、夫のHと私は、高齢… 続きを読む 同じテーマの記事 20年以上前に離婚した夫を介護して 2013.10.19 Yさん(60代・女性) この記事は、隔月発刊の「ザ・伝道」第198号より転載し、編集を加えたものです。 突然の知らせ 「お母さん、親父が心筋梗塞で倒れてICUに入っちょるんよ。糖尿病で、足の指も2本もげて、太腿に腫瘍もできちょって……」 そう長… 続きを読む 同じテーマの記事 アル中の父親を許し介護した15年間 2013.10.19 Iさん(40代・女性) この記事は、隔月発刊の「ザ・伝道」第187号より転載し、編集を加えたものです。 アル中の父から虐待されて 「何べん言うたら、分かるんや!」 父はそう怒鳴ると、まだ小学生だった私の髪の毛をつかんで引きずり、さらに、背中を拳… 続きを読む 同じテーマの記事 母の介護を通してつかんだもの 2013.10.19 悦子さん(70代・女性) この記事は、隔月発刊の「ザ・伝道」第165号より転載し、編集を加えたものです。 「さぁ、好きなことしよう!」 今から十数年前、私が58歳の頃のことです。 当時、外資系企業の人事担当だった私は、オーストラリア人の上司に呼ば… 続きを読む